同じ成分なのに、化学名の書き方が違うのはなぜ?
中級編②の一覧表では、APSの化学名を「L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウム」と書きました。ところが、資料によっては「L-アスコルビン酸リン酸エステルNa塩」と書かれていることもあります。同じ成分なのに、なぜ書き方が違うのでしょうか。
化学名の書き方は、1つに決まっていない
化学名は、成分の構造を言葉で表したものです。ただ、日本語で書くときには、位置を示す番号を入れるかどうか、塩の部分をどう書くかなど、書き手や資料によって違いが出ます。そのため、同じ成分でも、見た目の違う化学名が使われることがあります。
化学名を分解してみる
まず、「L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウム」を、4つの部品に分けてみます。
- L-アスコルビン酸:ビタミンC本体です。
- -2-:リン酸がくっついている位置です。アスコルビン酸の炭素の2番目(C2)を指します。C2については、上級編④で詳しく説明します。
- リン酸エステル:リン酸が、エステル結合という形でくっついていることを表します。
- ナトリウム:塩の相手(対イオン)です。
書き方が違う3つの理由
①位置の番号(-2-)を省くことがある
「-2-」を省いて、「L-アスコルビン酸リン酸エステル…」と書く資料は多くあります。化粧品原料として流通しているAPSは、2位にリン酸がくっついた構造なので、省いても通じるためです。ただ、アスコルビン酸には、リン酸がくっつけそうな場所が他にもあります。位置まで正確に伝えたい場合には、「-2-」を入れて書きます。
②塩の書き方が違う
塩の部分は、「Na塩」と略して書く場合と、「ナトリウム」「ナトリウム塩」と日本語で書く場合があります。意味は同じです。
③ナトリウムの数を省くことがある
APSは、ナトリウムが3つくっついた「トリナトリウム塩」です。ただ、化学名では、この数を省いて書くことが多くあります。数が3つになる理由は、上級編⑤で説明します。
試薬メーカーの製品名の例:FUJIFILM Wako「L-アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩」(「-2-」を省き、「塩」と書く形)
名前が違うときの調べ方
名前の違いが、「書き方の違い」なのか、「別の成分」なのかは、位置の番号と、塩の種類を見て判断します。迷ったときは、化粧品の成分表に載る表示名称(アスコルビルリン酸Na)や、INCI名(Sodium Ascorbyl Phosphate)で確認すると確実です。
同じ成分でも、位置の番号、塩の書き方、塩の数の省略などで、化学名の見た目は変わる。化学名だけで判断せず、表示名称やINCI名で確認するのが確実。